読了本

飯尾潤『日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ』(中公新書


■難しかったお。


■官僚の領分と政治家の領分がごっちゃになっている問題について論じた本。ってとこでしょうかね…。いや、小泉が自民党を「ブッ壊した」のって、橋本龍太郎があってこそだったとか(これ、きちんとおさえとくべきところだと思う)、自民党と政府をごっちゃに考えるべきではないとか、議院内閣制って大統領制よりも権力が集中するシステムなんだとか(ここら辺に「ヘ〜」とか思っちゃうのは、オイラの政治リテラシーの低さなのかもだけど)、まあ、勉強にはなったところはなくはなかった。しかし大半は歯が立たなかった…。これはもう、新書と言うより、専門書の領域に達していると思うんだな。


■「新書ブーム」とかで、あちこちの出版社が新書業界に参入した結果、オバチャンがご飯大盛りにする店はどうたらこうたらとか、適当に生きるとか、モテがどうしたこうしたとか、不思議な本も数多出るようになった。けどその一方、(これは前にもどこかでエントリ書いたけど)、いや、もうこれ、研究余滴って言うよりハードな専門書じゃん。という本も随分と出されるようになった気がする。加藤陽子氏の戦争関連書とか。格差社会


日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ (中公新書)

日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ (中公新書)

原武史昭和天皇』(岩波新書
西村賢太『どうで死ぬ身の一踊り』(講談社


■『大正天皇』に続く、原武史による近代天皇シリーズ第二弾。「宮中祭祀」と「昭和天皇」との関わりを中心に論じる。『大正天皇』において原は、「行幸」というシステムに焦点を絞ることで、新たな「大正天皇」像を浮かび上がらせていたけど、その手法とやはり通じるものがあると感じました。秩父宮や貞明皇太后との確執とか、ちょっとドラマタイズし過ぎじゃね?、という気がしないでもなかったけど、どうなんでしょうね。侍従日記とか読んでこちらで確認するしかないんだけど、そこまでする暇も金もないしなあ。


■我らが今上天皇も、宮中祭祀に対する熱意が相当なものである、っていうのはよく知られた話。それはおそらく昭和天皇からの影響なんだろうというのが、本書では問わず語りに語られている、とも言える。今上天皇戦後民主主義の最後の砦的に称揚されることが多い御方であるが、そのあたりの理念と神への思いというのがどのように折り合っているのだろうか。これって興味深々なんだけど、資料が公開される頃にオイラはまだ生きていることができているのか、どうか。


西村賢太、やはり面白いなあ。「ディスる」という、日本人がおそらく最も得意としないであろう言語作法を、みごとに己のものとしている。しかも、それが日本近代文学の正統を正しく引き継ぎながら、というのが素晴らしい。


昭和天皇 (岩波新書)

昭和天皇 (岩波新書)

どうで死ぬ身の一踊り

どうで死ぬ身の一踊り

石川啄木『ローマ字日記』(岩波文庫


■「子を貸し屋」の舞台であった、浅草十二階下の私娼窟が出てくる「近代文学の名作」といったら、コレでございますね。


■借金しまくり、家賃滞納しまくり、女買いまくり。寝ている私娼の性器にまずは指を五本入れ、それでも起きない私娼に「ああ、何千人もの男を相手にしていて、筋肉がゆるみ切っているのだ」と、今度は拳骨一つ、性器に入れる。そこでようやく気持ち良さそうな声を出しながら目を覚ます私娼に対し、哀れを感じる…。いや、そいつはやり過ぎだろ。


■同じ下宿で寝泊りしていた金田一京助の初キッスがいつで、相手は誰であったと細かに書いたりとか、隣室の京大生と下宿の娘がヤッている声に聞き耳を立てたりとか、啄木大暴れ。でも昔は、これが青春文学の金字塔って感じで評価されていたわけだよな。「近代文学」って、ホント不思議な制度だったのだなあ、と改めて感慨に耽る。


啄木・ローマ字日記 (岩波文庫 緑 54-4)

啄木・ローマ字日記 (岩波文庫 緑 54-4)

宇野浩二『蔵の中・子を貸し屋―他三篇』(岩波書店


私小説といったら宇野浩二。と思って手に取ったこの本ですが、かなりフィクション色の濃い作品集でございました。だがしかし、どれも小説として上手い。全体の構成力が特にあると思わないけど、語り口の絶妙さで、どんどんと物語の中に引き込まれていく。


■圧巻は「子を貸し屋」。巻末の自作解説によれば、作者本人としてはあまり気に入った作ではないらしいけど、いや、間違いなく傑作でしょう、これ。育てている子供(実の子ではない)を私娼に貸し出す男の話、というと陰惨な話のように聞こえるけど、登場人物の誰もが善人(これ、「近代文学」にしては珍しい人物設定だよね)なものだから、作品全体が多幸感に満ち溢れている。貸し出される子供、太一君のキャラがとても可愛い。山中貞雄の『百万両の壺』をふと思い出す。そんな感じ。オチのつけ方が意外ではあるんだが、こんな調子で物語がどんどん続いていって、いつまでも終わらないで欲しいな的な、無時間的/ユートピア的世界が物語に構築されちゃうと、ああやって終わらせるしかなくなってしまうのかな、という気がしないでもないのでした。版切れているのに、ネタバレ気にする書き方しましたけど。


蔵の中・子を貸し屋―他三篇 (岩波文庫)

蔵の中・子を貸し屋―他三篇 (岩波文庫)

嘉村礒多業苦・崖の下』(講談社文芸文庫

 というわけで、いきなりの私小説マイ・ブーム。このまま波に乗って、ただいま宇野浩二読んでいます。


業苦・崖の下 (講談社文芸文庫)

業苦・崖の下 (講談社文芸文庫)

今日のスパム

はじめまして。
あなたのご友人から「小学生時代に修学旅行でお風呂に入ったとき他の人より人並みはずれた短小だった」とお聞きしたのですが本当ですか?
今もその短小ぶりは発揮されてますでしょうか?

率直にお話しますと、実は私もオマン穴がすっごく狭くって、
普通サイズの男性でもかなりキツイというか痛くて…気持ちィィとか思えないんです。
針の穴に曙の指を無理やり通されているような気持ちと言えば、
どれくらいキツイか分かってもらえますでしょうか?
そんな時あなたの短小のお噂を耳にし、いてもたってもいられない衝動に駆られ、
ご友人の方にご了承頂いた上でメールさせて頂く事にしました。
ひょっとすると事前にお話をお聞きになられておらず驚かれているかも知れませんね。
もし、そうでしたら失礼をお詫びします。

付け加えると、ご友人の方からは「恐ろしく先細りな形だった」ともお聞きしています。
まさに、それこそがあなたに私がメールする決定打となった言葉でした。
そうなんです…まずはゆっくり細い部分で責められて、段々と根元が入っていくにつれて
太さを感じられるという形こそ私の求めていた理想の形だったのです。

適材適所という言葉がありますが、あなたはまさに私にとって適材。私はあなたにとって適所。
刀とさやのような関係を結べるパートナーだと思ったのです。
あなたも私と同じようにそう感じていると思います。
と同時に、私がどんな女なのか確認したいと思われている頃だとも思いましたので、
ここに、
http://×××.fiberia.com/

私の顔や全身の写真、そして私がなぜドーベルマン奈々子というハンドルネームなのかも
すべて分かるように理由も書いておきました。
ドーベルマン奈々子で検索してもらえればすぐ分かると思います。
もちろん、プロフィールを見ていただければケータイのアドレスもあなたに渡るようにしてあります。
http://×××.fiberia.com/

それではお返事お待ちしています。

四方田犬彦『日本映画と戦後の神話』(岩波書店

柳下毅一郎『シネマ・ハント』(エスクアイアマガジンジャパン)

西村賢太『二度とはゆけぬ町の地図』(角川書店

■噂には聞いていたが、西村賢太凄過ぎ。なんだこの人。久しぶりの超大型純文学作家だよ。アマゾンに既刊二冊慌てて注文した。アマゾンから届くまでに何を読んでいるかって?当然、嘉村礒多です。



日本映画と戦後の神話

日本映画と戦後の神話


シネマ・ハント (Eブックス・映画)

シネマ・ハント (Eブックス・映画)


二度はゆけぬ町の地図

二度はゆけぬ町の地図