原武史昭和天皇』(岩波新書
西村賢太『どうで死ぬ身の一踊り』(講談社


■『大正天皇』に続く、原武史による近代天皇シリーズ第二弾。「宮中祭祀」と「昭和天皇」との関わりを中心に論じる。『大正天皇』において原は、「行幸」というシステムに焦点を絞ることで、新たな「大正天皇」像を浮かび上がらせていたけど、その手法とやはり通じるものがあると感じました。秩父宮や貞明皇太后との確執とか、ちょっとドラマタイズし過ぎじゃね?、という気がしないでもなかったけど、どうなんでしょうね。侍従日記とか読んでこちらで確認するしかないんだけど、そこまでする暇も金もないしなあ。


■我らが今上天皇も、宮中祭祀に対する熱意が相当なものである、っていうのはよく知られた話。それはおそらく昭和天皇からの影響なんだろうというのが、本書では問わず語りに語られている、とも言える。今上天皇戦後民主主義の最後の砦的に称揚されることが多い御方であるが、そのあたりの理念と神への思いというのがどのように折り合っているのだろうか。これって興味深々なんだけど、資料が公開される頃にオイラはまだ生きていることができているのか、どうか。


西村賢太、やはり面白いなあ。「ディスる」という、日本人がおそらく最も得意としないであろう言語作法を、みごとに己のものとしている。しかも、それが日本近代文学の正統を正しく引き継ぎながら、というのが素晴らしい。


昭和天皇 (岩波新書)

昭和天皇 (岩波新書)

どうで死ぬ身の一踊り

どうで死ぬ身の一踊り