読書

山下達郎先生はどう読むのか?

■ジム・フシーリ、村上春樹訳『ペット・サウンズ』(新潮社) ■ウィルソン一家の暗部やブライアンの狂気などといったテーマと『ペット・サウンズ』とを絡めて論じた本かな、と思ったら違っていました(その辺のダークな話はちょこっと出てくるけど)。 ■録音…

■木股知史『画文共鳴』(岩波書店) ■読了。最後の朔太郎についての論が一番面白かった。画文共鳴―『みだれ髪』から『月に吠える』へ作者: 木股知史出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2008/01/16メディア: 単行本 クリック: 17回この商品を含むブログ (6件) …

読了本

■山形浩生『要するに』(河出文庫) ■『山形道場』の文庫化。と言うわけで、ほとんど既読でした。新鮮さはなかったけど、改めて読んでみると、目のつけどころの早さがズバ抜けているよなあ、というところに感心させられましたですよ。 要するに (河出文庫)作…

■西村賢太『暗渠の宿』(新潮社) ■というわけで、一気に既刊本三冊を読み終えました。これまでの展開を踏まえると、「私」のDVの餌食になっている「女」は、パート先の男と一緒になるという形で「私」と別れることになるんだろうな…。早く続きが読みたい!…

■加藤陽子『満州事変から日中戦争へ』(岩波新書) ■難しかったお(その2)。 ■と言うわけで、長らく積読状態だったこの本を消化しました。かなり緻密な議論なんで、「ちょっと日本史の復習でも」って感じには不向きな一冊ではある。 ■後の「歴史」が「侵略…

読了本

■飯尾潤『日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ』(中公新書) ■難しかったお。 ■官僚の領分と政治家の領分がごっちゃになっている問題について論じた本。ってとこでしょうかね…。いや、小泉が自民党を「ブッ壊した」のって、橋本龍太郎があってこそだ…

■原武史『昭和天皇』(岩波新書) ■西村賢太『どうで死ぬ身の一踊り』(講談社) ■『大正天皇』に続く、原武史による近代天皇シリーズ第二弾。「宮中祭祀」と「昭和天皇」との関わりを中心に論じる。『大正天皇』において原は、「行幸」というシステムに焦点…

■石川啄木『ローマ字日記』(岩波文庫) ■「子を貸し屋」の舞台であった、浅草十二階下の私娼窟が出てくる「近代文学の名作」といったら、コレでございますね。 ■借金しまくり、家賃滞納しまくり、女買いまくり。寝ている私娼の性器にまずは指を五本入れ、そ…

■宇野浩二『蔵の中・子を貸し屋―他三篇』(岩波書店) ■私小説といったら宇野浩二。と思って手に取ったこの本ですが、かなりフィクション色の濃い作品集でございました。だがしかし、どれも小説として上手い。全体の構成力が特にあると思わないけど、語り口…

■嘉村礒多『業苦・崖の下』(講談社文芸文庫) というわけで、いきなりの私小説マイ・ブーム。このまま波に乗って、ただいま宇野浩二読んでいます。 業苦・崖の下 (講談社文芸文庫)作者: 嘉村礒多出版社/メーカー: 講談社発売日: 1998/09/10メディア: 文庫購…

■四方田犬彦『日本映画と戦後の神話』(岩波書店)■柳下毅一郎『シネマ・ハント』(エスクアイアマガジンジャパン)■西村賢太『二度とはゆけぬ町の地図』(角川書店)■噂には聞いていたが、西村賢太凄過ぎ。なんだこの人。久しぶりの超大型純文学作家だよ。…

■矢作俊彦『マンハッタン・オプ』をまとめて読みました。探偵が部屋に入ったら死体が転がっていた、というパターンが何度となく繰り返されるので途中で食傷気味になりますが、他の矢作作品と同様、華麗な比喩と凝ったプロット展開を堪能できますので、気軽に…

今年のベスト10

■ページを捲る手を止められず、一気に読んでしまった今年の10冊。1 ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』 何度となく挑戦しては挫折してきたこの小説を、この新訳によってようやく通読できた。夏の暑い最中、一気に読んだ。この小説の持つ熱気と今年の夏…

原武史『滝山コミューン1974』(講談社)

・面白かったです。 ・「全共闘」世代に属する若者が大学を卒業し、小学校の教員となった。そこでその教員が構築した集団主義的教育システムの、とてつもない歪みと、そこに巻き込まれた子供たちが内面化した、紅衛兵さながらの「政治」意識が、みごとに炙り…

山本譲司『累犯障害者』(新潮社)

・ここのところ、「ろうあ者」のグループと電車を乗り合わせることが多い。何かの集まりから帰ってくる途中、といった面持ちで、何人かで電車に乗り込んでくるのだが、すると彼ら/彼女たちが車内で手話をはじめる。その手話を交わしている様子というのに、…

菊地成孔『聞き飽きない人々』

・ジャズ編の八十年〜九十年代がかなーりツボ。「ジャズライフが平行四辺形」はおろか(←って、まるっきりウソだそうですが)、「ジャズライフが正方形」だった頃も知らないんだけど、スタンリー・ジョーダンとかコートニー・パインとかロリー・ジョーダンと…

浅羽通明『右翼と左翼』

・読了。 ・膨大な新書本を読み込むことで「右翼」と「左翼」を論じる本。それゆえ、不十分なところもなくはない。特に、後半なるにしたがって、議論が粗くなったように思えたりもした。しかしこれは、粗めの概念枠組みでないと今日の複雑な政治状況をクリア…

四方田犬彦『「かわいい」論』(ちくま新書)

・「かわいい」と名指すということは、そのように言及されるモノ(ヒト)の属性に従った分節化だと言うよりも、「これかわいいね」「ホントだ。かわいいね」という、なんというかここだけ書くと小津映画の会話みたいだが、それはともかくとして、自分たちが…

青山真治『死の谷’95』(講談社)

・一郎という兄が弟の次郎に妻の浮気調査を依頼する場面から物語が始動し、その物語は手記の引用で幕を降ろす。冒頭で夏目漱石の『行人』に対する言及がある点からも明らかだが、この小説の全体の構成は『行人』を転用したものであるといえる。だがそうした…

『意味がなければスイングはない』の続き

・村上春樹はスガシカオが好きなのでした。この本でも一章が割かれていたのでした。村上春樹って、マスで受けてるアーティストには一定の距離をとったリスニング生活を送っていると思いきや、意外や意外って感じかもですね。いや、僕も好きなんですよ、スガ…

読了本

・村上春樹『意味がなければスイングはない』(文芸春秋) ・他にも最近出された毛沢東の伝記(べらぼうに面白い。なんで中国史は現代史であっても三国志級にドラマチックに展開するのか)とか、内田樹の新刊とかも読み終えましたが。 ・ブルース・スプリン…

中村文則『土の中の子供』(新潮社)

・第百三十三回芥川賞受賞作。この作家の作品、実は丹念に追っていたのであった。デビュー作から単行本化しているのはほとんど読んでいるはず(と言っても、これで三冊目なんだけど)。デビュー作の『銃』も二作目の『遮光』も、どちらも芥川賞にノミネート…

ちくま文庫復刊

・ちくま文庫が復刊希望のアンケートをしてますよ。知らなかった〜。それにしても締め切り迫る! http://www.chikumashobo.co.jp/top/fukkan/ ・ちなみに私が復刊希望に選定したのは以下のとおり。石原吉郎『望郷と海』 色川武大『唄えば天国ジャズソング』 …

奥泉光『モーダルな事象』(文芸春秋社)

・いや何だかな。この人はスランプというか、新機軸を打ち出すべき時がもうとっくにやって来ているのに、それを先送りにし続けている気がする。 ・ここしばらく続けている、ミステリという枠内で小説を書くのはまあ大目に見よう。だがしかし、幻想場面にしろ…

読了本

・高橋哲哉『靖国問題』(ちくま新書)・二十四万部も売れているんだそうだ。凄いな。・「歴史認識」「文化」などの枠組みから、「靖国」がどのような「問題」であるかを明晰に論じた書。文献引用の多さが読んでいてまどろっこしさを感じさせるものの、難解…

読了本

・小林よしのり『新ゴーマニズム宣言SPECIAL 沖縄論』(小学館) ・小林よしのり。買って読んでしまいましたよ。「朝ナマ」観る限りにおいては時々妙に正論を吐いていて、まあなんと言うか「成長の跡」というものが感じられていた今日この頃だったの…

読了本

・菊地成孔+大谷能生『東京大学大学のアルバート・アイラー』(メディア総合研究所) ・大江慎也+小松崎健郎『wards for a book』(シンコーミュージック)・『東京大学のアルバート・アイラー』は、バークリー・メソッドの興隆と衰退を軸にジャズ史をレクチ…

読了本

・長谷部恭男『憲法と平和を問い直す』(ちくま新書) ・斉藤環『「負けた」教の信者たち』(中公新書ラクレ) ・「サルでもわかるリベラリズム」という感じの本が欲しいのだが、リベラリズムの大家・井上達夫の書籍は素人には値段と敷居が高過ぎるし、宮台…

菊地成孔『サイコロジカル・ボディ・ブルース解凍』(白夜書房)

・読了しました。 ・格闘ヲタっぷり全開の「ひとりマニュ穴」(http://www.manuera.com/manuana/)のテクストと、観戦(&マスコミ報道のチェキ)と無縁の五年を挟んで後、再び格闘技の世界に舞い戻り書き下ろしたテキストを組み合わせた、菊地成孔の格闘技…

三島由紀夫『青の時代』(新潮文庫)

・文庫もハードカバーも含め、三島の本がずらーっと横浜ルミネの有隣堂に並んでいたが、いったい何が起きたのか?ブームなのか?それとも右傾化の兆候なのか?(←まさかね)。 ・と言うわけで、前から読みたかった『青の時代』を購入。で、読了。んー。イマ…