ヤマジカズヒデ&花田裕之@東中野プリズントーキョー

■楽勝で座れるっしょ、とか侮っていたら、会場のHPをチェックしたところ、席は予約で埋まっているので当日券は立ち見です、とのこと。マジかよー!ということで早目に家を出ました。当日券は二番目だったので、キャンセル分と思しき席が空いていたには空いていたのですが、ステージが見にくい位置っぽかったんで、立って鑑賞しておりました。疲れましたが、両者のギターがしっかりと視界に入るなかなかナイスなポジションがゲットできました。



■一番手はヤマジソロ。一曲目が「Blue bus」(ソロ三作目の一曲目ね)と、意外なところを突いてきた。もともとは静謐な曲ですが(追記:今日出勤途中にi-podで聴き返したら、後半部はそうでもなかったというのに気付きました。失礼)かなりノイジーかつ轟音な感じになっておりましたよ。他はdipの新譜から「はるぼら」とか(この曲はライブでまだ聴いていないけど、ソロの方が良いんじゃないかと思う)、「COME+GO」「LUNG」(実はこの二曲に関しては記憶があやふや。どっちか一曲だったかも)、で、最後は「魂ヌカレタ6C」。MCは「会場で売るCD−Rを焼くのが間に合わず、出演直前まで焼いていて、今は花田さんが焼いてくれている。『こうやりゃ良いとね』と九州弁で快諾してくれた」とか(笑)。出来立てだから良いってものじゃないよなあ、食い物じゃあるまいし(笑)。



■二番手は花田裕之ソロ。一曲目が「sadness city」って!ソロ一作目の曲が来たかあ!と(実はワタシ、中学の頃からルースターズのファンだったのです)。初期の花田裕之って布袋がプロデュースしていた関係で、音があまりに無機的になってしまっていて、今聴くとキツい代物であったりするのですが、アコギ一本でメロディー崩して歌われると、いやあ、物凄くブルージーでヨイ。しかもルースターズの最後のアルバムの超名曲「LADY COOL」まで演奏したよ!オイラが中2か中3の頃のマイ・アンセムですよお父さん!感涙!最近のソロ活動は全く追っていなかったから知らない曲がほとんどだったけど、この二曲で僕は十分でしたよ。あ、途中で元・村八分の人がゲストで入ったりもしました。



■で、お待ちかねのデュオ(うなぎブラザーズ)。一曲目がヴェルヴェットのカヴァーで「宿命の女」。いや、ヴェルヴェットのカヴァーって言うより、ルースターズのカヴァーって考えるべきか(大江の脱退直前の「PHY」で花田ヴォーカルでこの曲をカヴァーしている)。実際、この後はルースターズの名曲のオン・パレード。覚えている限り列挙してみるね。「CASE OF INSANITY」、「One more kiss」、「SITTING ON THE FENCE」、「DRIVE ALL NIGHT」、で、最後が「do the boogie」と「撃沈魚雷」のメドレー。



■どれも大江の曲なんだけど、花田が見事に自己薬籠中のものとしていました。大江が歌うルースターズ・ナンバーって肩に力が入り過ぎていて、いや、もちろんそれが超絶的なテンションの高さを担保しているというのは確かなんだが、今日の花田のように肩の力を抜いて、歌メロをフリーキーに崩しながら歌う、というやり方も、曲のブルージーさが見事に引き出され、新たな魅力に気付かされる、という形になっていたのでした。



■ヤマジは以前、「ルースターズのファーストは一曲目から全部空で弾ける」と言っていたことがあったけど、「One more kiss」とか「DRIVE ALL NIGHT」とか、うん。確かにギターがほとんど完コピであったと思う。「DRIVE ALL NIGHT」の最後の早いギター・カッティングとか、いやあ、良く弾けるなあ、と関心。花田もかなり興に乗って、本日のハイライトでありました。しかし、ヤマジも本家本元を前にして、ってことになるわけだから、緊張しただろうなあ、と思わずにいられないけど、ここまで完璧にやられたら、花田としてもギタリスト冥利に尽きたのではないか、とも思う。



ルースターズ・ナンバーではない曲が終わった後、花田さんがヤマジに「ギター上手いね」とボソっと呟いて、場内が暖かい笑いに包まれたりと、和んだ感じにも満ちた、良いライブでございました。次のヤマジソロは二月にwith灰野敬二ですね。どういう展開が繰り広げられるのか?!

ブルース・スプリングスティーンと日本。


■邦楽における洋楽の受容、という問題を考えた時に、スプリングスティーンという存在の大きさは避けて通ることができない。いやマジで。パクリと言うしかないそのまんまの流入振りと、ヤンキー&ファンシー化というフィルターを通じた流入振りという、本質的には対極にあるはずの受容形態―共に日本の西洋文化受容のステロタイプな形態であることは言うまでもない―が、みごとなまでに一体化して日本の音楽文化に根付いたのだから。


■誰のことを言っているのかって?この二人のことですよ。



■いやあ。両方とも超名曲だと思うよ、マジで。マイ世界の構築のされ方の隙のなさっぷりが、ホント素晴らしい。「本気」という観念が実体として結晶化している「キャプテン・オブ・ザ・シップ」。「J−BOY」だって、歌詞が「日本のロック」を過不足なく体現している。そうなんだよ。日本人はコレが一番良いんだよ。外国から帰ってきたらお茶漬食っちゃうように、はたまた鮭が生まれた川に帰っていくように、日本人はいつか長渕剛浜田省吾に行き着くんだって。無理して洋楽聴くことはないよ。な、みんなもっと自分に素直になろうぜ。オレは嫌だけど。


■この二人の共通点はもう一つ。松本人志が大好きなんだよな。

矢作俊彦『マンハッタン・オプ』をまとめて読みました。探偵が部屋に入ったら死体が転がっていた、というパターンが何度となく繰り返されるので途中で食傷気味になりますが、他の矢作作品と同様、華麗な比喩と凝ったプロット展開を堪能できますので、気軽に読むには良いのではないかと。


■四方田センセイの文芸評論集二冊も読了。「マラーノ文学」は理論として体系づける余地がもっとあるのではないかと思いました。翻訳論の冒頭でやっているような感じで。その翻訳論の冒頭部分は、(四方田先生にしては)かっちりとした研究論文文体になっていて、ファンとしては意外性が楽しめます。年末に映画論も出たので、今年四方田先生は五冊も本を出されたわけですか。



マンハッタン・オプIII (ソフトバンク文庫NV)

マンハッタン・オプIII (ソフトバンク文庫NV)


日本のマラーノ文学

日本のマラーノ文学

翻訳と雑神

翻訳と雑神

今年のライブのまとめ。

以下が全部だと思われます。12本。平均して月イチってわけですな。

DIP@代官山UNIT(1月20日)
シザー・シスターズ@横浜BLITZ(1月27日)
■JET@武道館(2月9日)
スガシカオ@武道館(2月27日)
菊地成孔クインテット・ダブ・ライブ@新宿クラブハイツ(3月25日)
DCPRG@渋谷O−EAST(4月25日)
■GUNS N' ROSES@幕張メッセ(7月14日)
フジロック@苗場(7月27〜29日)
■ケイ赤城トリオ@青山Body & Soul(9月15日)
岡村靖幸@ZEPP東京(11月8日)
面影ラッキーホール@原宿アストロホール(12月2日)
豊田道倫@渋谷O−nest(12月29日)

豊田道倫@渋谷O-nest

豊田道倫のライブ。初めて行ったんですが、凄く楽しめましたです。


■ベースが上田ケンジで、キーボードがDr.Kyon、ドラムが久下恵生でゲスト・ギターがヤマジ先生。前者三人は新作のメンバーまんまなわけですが、改めて並べてみると豪華なメンバーですよね、これ。しかもPAが内田直之ときたもんだ。


■ちなみに最初にゲストを依頼したのは小島麻由美だったそうです。即効で断られた、とか(笑)。他にも、今日のライブは早目にブッキングしたんだけどnestなんてたいしたライブハウスじゃないのにこの時期は随分と埋まっていたんだとか、HEADZの悪口(Zって何だよ、的な・笑)とか、MCが言いたい放題でとても楽しい。MCと次の曲との繋ぎも結構考え込んでいるみたいで、音楽を学校行ってしっかり勉強したい、お、チャイムの音が→キーボドでチャイムの音→「このみ先生」とか(笑)。


■MCだけじゃなく歌も演奏もきっちりと作りこまれていたから、全体として印象深いライブであったわけなんだけど、中でも、ロック・テイストを前面に出した曲が特に強烈に印象に残りました。キーボートのミニマルなフレーズと、ヤマジカズヒデの空間を引き裂くようなギターと、細かいフレーズを刻むベースとタイトなドラムが一体となって、そこにPAがダブを飛ばし、サイケデリックな音圧が構築された後半は実に圧巻。ヤマジ先生のキレた感じの飛ばしっぷりは、最近の好調っぷりがひしひしと伝わってきました。


■そうしたトバしまくりの曲とギターの弾き語り(最後のアンコールではPAとマイクも切っての演奏でした)の静謐さ(まあ、一筋縄ではいかない静謐さであるのですが)がうまくバランスが取れていて、とても良いライブだと思いましたです。名曲「移動遊園地」もやりましたですよ。


■カメラマンはやっぱりカンパニー松尾。何度かすれ違ったのだけど、「おお!」って思うだけで、それ以上のことはできませんでした(笑)。