DIP『feu follet』

DIPの新作。最近のソニック・ユース、特に『ラザー・リップト』に近い感触を覚えた。ベースが脱退した直後のアルバムであるところ、ジャケットが赤いところ、とか、そういう表面的な共通点ではなく。


ジム・オルーク参加後のソニック・ユースの素晴らしさというのは、音の絡ませ方の気持ちよさにあったと思わけだが、今回のアルバムのポイントとなっているのは、まさにそこにあるだろう。実際、ミュージック・マガジンのインタビューでもヤマジは、「今回はアンサンブルに配慮した」みたいなことを言っているわけだし。


■けど、このラインは実は、ヨシノ参加後のアルバム(「UNDERWATER」)からそこかしこに見えていた傾向ではあったんだよね。ヨシノのベースのグルーヴィーさが、バンドをその方向に持っていったんだと思う。で、その流れに対しては大変好ましいものを感じていたんだけど、あえて難をいえば、ヒリヒリした殺伐さ、といったものを殺がれてしまっていたという面があった気がしないでもない。


■それをどのようにアンサンブルの中に取り入れるか?というのが新しいアルバムの一つの課題となっていて、そのプロセスの中でヨシノの脱退があったんじゃないか?というのがワタシの見立てであるわけですが。で、結果は、と言えば、うん。ヨシノの脱退は大変に残念であるが、バンドの鳴らしたい音を上手く鳴らせていると思う。バンドとしてのステージが一つ上がった感じがするよ。ここ最近のアルバムの中ではヤマジのギターが最も良い感じで歪んでいるし、ナカニシのドラムも頑張っている。ナカニシのドラムって、個人的には記名性がどれほどのものなのかはっきりしていなくて、なんで彼との活動にヤマジがこだわるのかよく分からない部分があったんだけど(しかもロキノンジャパンのインタビューによれば、バンドの休止期間って実はナカニシの脱退だったらしいね・笑)、初めてきちんと腑に落ちた。


■一曲目から最後まで、テンションをきちんと保っている。そのせいで、曲がキャッチーかどうかとは別の次元で、最後までアルバムが聞き通せる。最後の三曲の流れとか圧巻でございますよ(特に「danae」から「feu follet」に繋がる部分はムチャクチャカッコ良い)。でも実は、「to hell with it」の再演がなにげに一番嬉しかったかな。数年前のオムニバスに入っていたバージョンとは格段に違う。


feu follet(フ フォレ)

feu follet(フ フォレ)