浅羽通明『右翼と左翼』

・読了。


・膨大な新書本を読み込むことで「右翼」と「左翼」を論じる本。それゆえ、不十分なところもなくはない。特に、後半なるにしたがって、議論が粗くなったように思えたりもした。しかしこれは、粗めの概念枠組みでないと今日の複雑な政治状況をクリアに腑分けできない、という困難さのあらわれだと理解した。


・出版市場に膨大に出ている新書をいかに有効利用して、自分なりの「知」のガイド・マップを製作するか。その実践報告としても読める本である。これは「教養」崩壊以降における今日、新たに「教養」を構築する方法論として、現実的な線に沿ったとても望ましい形であると僕は思う。


・ちなみに言うと、この人の『天使の王国』は高校時代の僕にとってのバイブルである。高校時代に抱えていた不安というものが、あの本によってどれほど救われただろう。高校生の頃、なかなか積極的に勉強する気分になれなかった。それは僕がとんでもなく怠惰だったからだろうか。それもあるだろう。だけど、一番の大きな理由になっていたのは、自分の目の前にある「勉強」が、「世界」に向かっていく上で何にも役に立たないような不安に囚われてしまっていた、ということだったと思う。ちょうど湾岸戦争の頃だった。そんな僕に、いや、ごちゃごちゃ言う前に勉強せいや、と訴えたのがこの人の『天使の王国』だった。

右翼と左翼 (幻冬舎新書)

右翼と左翼 (幻冬舎新書)