今年のベスト10(書籍編)・後編
順番は関係なしね。
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②小島信夫『うるわしき日々』(講談社文芸文庫)
・追悼。
・小島信夫の小説を今後読んでいく上でポイントとなるのは、主人公の「家」というイレモノに対する拘泥だろう。そこには、「家父長」という既成のコードには収まらない何かがある。彼(ら)は、どんなに頑張っても、「家」を作り損ね続けてしまい、その後ろめたさから逃れることができない。それは戦後の「父」のジャストフィットな象徴なはずで、この「間の抜けた」「父」を、否定するのでも後ろ向きに肯定するのでもなく、どのように積極的に肯定して引き受けていくのか。それは私たちが避けてきてしまった、重い思想的な課題なのだと思う。
- 作者: 小島信夫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/02/09
- メディア: 文庫
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②仲正昌樹『集中講義!日本の現代思想』(NHKブックス)
・北田暁大氏が「左翼だか右翼だかよく分からない人」と評価していたけど、字義通りの「保守主義者」の「左翼」だというのが僕の評価。内田樹氏に近いと言えば近いか(怒涛のブックメーカーぶり、という点でも)。
・それはそうと、ホント、感動的な本だ。現在の思潮動向が、「右」も「左」もいかに陰謀論的な隘路に迷い込んでいるかにはっきりと気づかされる。そこから抜け出すためのガイド・マップ。
③『吉田豪のセメント!!スーパースター列伝パート1』(エンターブレイン)
・吉田豪のインタビュー本、大好きなんですよ(笑)。
・「昭和プロレス」関係者へのインタビュー集。鶴見五郎だの田代まさしだのイーデス・ハンソンだのと、微妙なポイントを突きまくりの絶妙な人選。その微妙さにも関わらず、インタビューイーを決して見下すことのないインタビューに、「愛」が透けて見える。パート2も早く出て欲しい。
吉田豪のセメント!!スーパースター列伝 (kamipro book’s)
- 作者: 吉田豪
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2006/04/01
- メディア: 単行本
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④菊地成孔+大谷能生『東京大学のアルバート・アイラー―東大ジャズ講義録(キーワード編)』(メディア総合研究所)
・モラスキーの悪口書いたばかりだけど、ジャズ批評はここまで来ているんだよね。強引さを厭わない、大胆な提起を出しまくっている。香具師顔負けの二人の言葉を信じるか信じないかは、読者次第。だけど批評のダイナミズムって、本当はそのへんにあるはずなんだよ。
⑤高橋源一郎『虹の彼方へ』(講談社文芸文庫)
・ついに出ました。「ポップ」とは何かを知りたいあなたのための高橋源一郎初期長編小説の一つ。だけど、この作品から源ちゃんは厳しいところに辿り着いてしまったんじゃないか。高橋源一郎を批判的に捉えなおすには、この小説を何度となく読む必要があるだろう。褒めていない?確かに褒めていないんだけど、そんなことを考えさせられたという点で印象に残った。 作品を読まないで書いたっぽい、矢作俊彦大先生の解説はご愛嬌。
- 作者: 高橋源一郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/11/11
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⑥桐野夏生『グロテスク』(文春文庫)
・やっと読んだですよ。盲目の少年の出し方とか、ちょっとあざとい感じがしたけど、それぞれの証言がウソなのかホントなのか判然としない物語構成の絶妙さは、私たちが生きるこの世界の伏魔っぷりとそのまま重なるのだと思う。
- 作者: 桐野夏生
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/09/05
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- 作者: 桐野夏生
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
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⑧松山晋也編『めかくしプレイ』(ミュージック・マガジン増刊)
・『ミュージック・マガジン』の人気企画をまとめたムック本。ずっと連載を読んできたんだけれど、タイトルにエッチな含意があることに単行本化で初めて気づきました(表紙写真を見て)。①ノイズ・ミュージックを偏愛していた過去を明かすスガシカオ②同じギタリストとして灰野敬二への尊敬の念を語る鬼怒無月と山本精一③イントロ二秒で「ルースターズ」と答えるヤマジカズヒデと山口洋。④長渕への熱い思いを語る向井秀徳とパラダイス・ガレージ。この辺が個人的にはグッときたかな。
⑨T・カポーティ『冷血』(新潮社)
・映画『カポーティ』公開に合わせて、新訳版を手に取りました。宝の山を探していたはずの犯人二人が、空き瓶を拾うシーンにちょっと涙しそうになる。しかし、新潮社の海外文学の文庫化、早くないか?それだったら『百年の孤独』とかも文庫にしても良いんじゃないかな。
- 作者: トルーマンカポーティ,Truman Capote,佐々田雅子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/06/28
- メディア: 文庫
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⑩S・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』(中央公論社)
・村上春樹のギャツビーって、蓮實重彦の「ボヴァリー夫人」論と一緒で、永遠の予告編なのだろうと思っていたんだけど、不意を突く形であっさりと出て、ちょっと驚いた。もの凄く月並みな意見だけど、あの小説で描かれているバブリーで浮ついた感じって、今日の日本と凄く重なって感じられた。
- 作者: スコットフィッツジェラルド,Francis Scott Fitzgerald,村上春樹
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/11/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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・他にも何かある気がするんだけど、まあいいや。こまめに読書ノートをつけるべきだね。
・良いお年を!