今年のベスト3(新書編)

・最近新書ばかり読んでいる。

幻冬舎やら朝日新聞やら新規参入がまだまだ続いていて、玉石混交の度合いが一層高まっている新書業界。このおかげで「石」のあまりの劣悪さに目を覆いたくなるようなケースが増えた一方、「玉」のレヴェルが異様に高まっているのも確か。これ、ハードカヴァーで出しても十分良いんじゃないかなあ、と思わず唸った今年の三冊。

①『私家版・ユダヤ文化論』(内田樹、文春新書)
 同じネタの使い回しやあまりの床屋政談な放言っぷりがやや目に付くようになっている最近の内田センセイだけれど、この本に関していえば、知的強度に満ちた内容と読みやすい文体が絶妙にブレンドされた、渾身の一作になっている。併せて読むべきはおそらく、フロイトの「モーセ一神教」。

②『性と暴力のアメリカ』(鈴木透、中公新書
 性とか暴力に対してアメリカがなぜかくもオブセッシブなのか。アメリカ追従の度合いを高めている現在の日本に対して批評性をきっちりと確保しておくためには、この問いを常に意識しておくことが重要なはず。そのための一冊。

③『笑う大英帝国』(冨山太佳夫岩波新書
 カルスタ以降極度に混迷を極めた「文学」研究だけれど、文学テキストの魅力をどれだけうまく引き出せるか、という本分にやはり一度戻るべきではないのか。もちろん、保守反動とならないためにも、理論的な強度を決して失うことなく。


私家版・ユダヤ文化論 (文春新書)

私家版・ユダヤ文化論 (文春新書)

性と暴力のアメリカ―理念先行国家の矛盾と苦悶 (中公新書)

性と暴力のアメリカ―理念先行国家の矛盾と苦悶 (中公新書)