ロネッツ

ロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」を聴くと「包丁人味平」を思い出す。


・原作は牛次郎。画はビッグ錠。作者の名前からして熱いが、マンガ自体も熱かった。グルメマンガの先駆的存在、として歴史的には位置づけられるのだろうが、「美味しんぼ」のように薀蓄が偉そうでないのが実に良かった。


・その「包丁人味平」にカレー対決。みたいなのがあって、確か屋台のカレー屋同士が対決する。という展開だったと記憶するが、そこに出てきた「もちカレー」(まあ、ご飯の変わりにモチを使ったまでの料理なのだが)などは、子供心にすげー食いたかったなあ。しかし、ここで話したいのは「もちカレー」のことではない。


・確か味平と対決するインド人が、スパイスに憑かれたようにこだわる料理人で、そのインドが最終的にたどり着いたスパイスというのはほとんど麻薬のようなもので、結果、最後にはそのインド人は俳人、否、廃人になっちゃう。っていうオチだった。子供心をへこますダークな展開。ってなわけで今でも記憶に残っているのだ。しかしそれ以上に、個人史においてそのインド人が重要なのは、対象への過度の拘泥が結果狂気に至るという人物像の原型を僕に与えてくれた、と思えるからで。


・で、ここで一気にフィル・スペクターの話になる。「ウォール・オブ・サウンド」と名指されることとなるフィル・スペクターの音への憑かれ方というのは、「包丁人味平」のインド人におけるスパイスへのこだわりと同質のものだったのではないかと、i-podでロネッツ聴きながら思ったわけなのですよ。「パンチの効いた音」「甘いストリングス」「ビターなソウル」「スィート・ソウル」。まあそんな感じで、味覚をあらわす言語表現と音をあらわす言語表現というのは比喩において通じ合っているのがしばしばで、そのへんもインド人とフィル・スペクターを重ねて見てしまうことに何がしか影響があるのかもしれないが。まあよくワカンネ。ともかくロネッツって良いわって話でした。