『ORIGIN DUO』
・この編成に井上富雄が加わった「アコースティック・ア・ゴー・ゴー」というユニットを、今年のフジ・ロックで観た。ルースターズの再結成的な行動に極めて自重的なはずの井上の参加が観る前にはやや不思議だったのだが、実際のステージ・パフォーマンス接してなんとなく腑に落ちたのだった。大江の声が十分に出ていたわけではない。だが、三人の奏でるアコースティックの音は、紆余曲折を重ねてきた大江の年月の重みをしっかりと受け止める器となっていて、今生み出される必然をはっきりと帯びたパフォーマンスになっていたのだ。井上が参加を決めたのも、これは単なる懐古趣味に堕すことはないだろう、という予感があったからではなかったか。
・このＣＤもそのときの印象と同じものを感じさせた。アーシーなブルージー感が基調となっているのだが、触ると皮膚が切れそうな緊張感がある。冷やりとした殺伐感と言えば良いのか、フォーキーなアシッド感といえば良いのか。十曲目「ＧＯＯＤ ＴＩＭＥ」のあとで放り投げるような乱暴さで「大江慎也」と相手を紹介する花田のカッコ良さといったら。いや、派手さはないものの、日本のロックで十本の指に入る「良い年の重ね方」をしていると思う。
