大友良英「CORE ANODE」(渋谷o-nest)


・これまでの僕の大友体験というのは、リーダー作だったらグラウンドゼロとかNJQとかNJOなんかがもっぱらで、リーダーグループ以外だったらDCPRGとかエマージェンシー!なんかを聴いてばかりって感じでした。


・こういう大友リスナーは大友ファンにおける左派に属するのか右派に属するのかよく分からないが、まあともあれ、鼓膜が破壊しそうな大友良英というのは、まあせいぜいが何年か前のDCPRG@リキッドのゲストで出演したときの、キャプテン・ファンクとのターンテーブル・デュオぐらいなものだったわけです。


・で、今日のライブ。いやびっくりしたです。 第一部は弱音でギターの反響音を大人数で出す、ある種ミニマリスティックなアプローチで、それに続く第二部のはじめに「辛くなったら途中退場アリですからね〜」みたいなこと言うものだから、あ、もしかしたら一部と同様の感じなのかな、と思いきやすっげー大音量。今回のライブを予告した大友ブログを改めて読んでみたら、「パンキッシュ」ということだったが、変にメロディアスな最近の「パンク」とは対極で、しかもその極北といった感じ。演奏が進むにつれ客席の中で何人か結構耳を塞ぎ始めるし、隣の人なんか耳栓をしていましたよ。お客が耳栓をするライブというのも凄い。私?頑張りました(笑)。


・中でも凄かったのが伊東篤宏のオプトロン。会場でもらったフライヤーによると、「蛍光灯の発行に伴う放電ノイズをアンプリファイして出力する」ということだが、「なんでわざわざそんなことをするのかわけが分からない凄さ」に溢れていた。ピカピカ光る蛍光灯に視覚的な刺激を強烈に感じるというのも、よくよく考えてみたら生まれて初めての経験である。このオプトロンのアンプの真後ろにいたものだから、向こう側にいる大友さんもなにやらギターを金属製の円盤(?)で弾いてみたりして面白いことをやっているようだったが、ほとんど聴こえませんでした。


・ともあれ、こういう演奏って終わった後は、静寂がとにかく心地よい。静寂の有意味性とか弱音の雄弁さに改めて気づかされることになるのだ。喧騒に包まれた渋谷の街で、ささやかな音にも耳を反応させながら、家路を急いだのでした。