読了本

小林よしのり『新ゴーマニズム宣言SPECIAL 沖縄論』(小学館


小林よしのり。買って読んでしまいましたよ。「朝ナマ」観る限りにおいては時々妙に正論を吐いていて、まあなんと言うか「成長の跡」というものが感じられていた今日この頃だったのだが。いや。本一冊読むのはキツイな。


・マンガのメディア論的特性を無視したネームの多さというのも然ることながら(今さら小林よしのりのマンガにおいてそこを批判しても仕方あるまい)、「左翼」/「左翼」以外(「右翼」ではない)という風な単純な二元論に全てを収斂させて議論を進める「分かりやすい」話にどうも違和感を覚えざるを得なかった、というのが正直な感想。しかし今どこに「左翼」がいるんだ。


・いや、そもそものところ、小林の議論の特徴はあらゆる問題を二元論的に「分かりやすい」図式に収斂させることにあると言えるのだが、その特徴を端的にあらわれているのが「私」の肥大化が日本をダメにしたという例のイデオロギーである。「沖縄論」でもしばしば見られるのだが、これもなんだかなあ。彼の苛立っている話にはむしろ、「日本人」が「公」の意識が持てないことが問題であるとかどうこうよりも、「私欲」に対して徹底的に開き直れない人間の「弱さ」みたいなものを私は感じとってしまうのだが。私だって「左翼」的発想は嫌いだ。人間の奥底に潜むエゴを徹底的に肯定しきれない人間の弱さ、「堕落せよ」(坂口安吾)といわれても安易にモラルを求めてしまう人間のどうしようもなさ、といった観点で人間を捉えられないところが「左翼」的発想の最悪にダメなところであると思っている。だが、そうした人間の「ふるさと」に正面から向き合おうとせず、「公/私」というもっもらしい話で人間のありようを見据えようとする小林の漫画というのも、実のところ先に述べたような「左翼」的発想のダメっぷりと選ぶところがないと、そんなことを考えてしまうのですよ。


・「民族」という観念への自意識を普遍的なものとして捉えるトンデモなさとかもすごく気になったがあまり深い話にしても仕方がない気がするのでこのへんで。



新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 沖縄論

新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 沖縄論