久し振りのジャズ


・ゲイのカップルの皆さんとすれ違いながら、新宿二丁目方向へ向かい、ビルの地下を降りると聞こえてくるのはベードラ四つ打ちのディスコ・ビート。その音が漏れてくる物々しいドアを横目でやり過ごしてもう一つのドアを開けると、今度は4ビートのシンバル・レガートの音が耳に鋭く突き刺さった・・・昨晩は久しぶりの新宿ピット・インにてライブ鑑賞。毎年新宿ピット・インの正月は、エルヴィン・ジョーンズの日本公演が定番メニューだったが、エルヴィンが昨年逝去したので、今年の正月はエルヴィンの追悼セッションが組まれた。エルヴィンのバンドで長くピアノを弾いていた辛島文雄が司会を務める。


・一部は辛島文雄(P)、高橋知己(Ts)、向井滋春(Tb)、桜井郁雄(B)、本田珠也(Ds)というグループ。本田珠也のドラムが素晴らしかった。この人、確か一時期ケイ赤城のトリオでドラムを叩いていた覚えがある。曲はエルヴィンのバンドの曲目が多く、モーダルなブルースが中心のメニュー。二部はメンバーが入れ替わるが、高橋知己のテナーはそのまま続投。こちらはスタンダートを中心としてステージが進む。椎名豊の力のこもったパーカッシブなピアノ・プレイが圧巻。ピットインそのものがやたらと久し振りだったし、オーソドックスなジャズのライブ自体、夏のケイ赤城以来だから半年振りか。もっと外に目を向けなきゃね、と反省から始まる一年だったのでした。


・エルヴィンの新宿ピットインは数年前、一度訪れたことがあったが、かなりの人が詰め掛けていて、新年早々こんなに混むとは、と驚いた覚えがある。あれは、新宿ピット・インで言えば、大友良英ニュー・ジャズ・カルテット並みの混み方だったと思う。ピットインに入ると、魔女のような佇まいをしたおばあさんが、「こんにちは」とにこやかに微笑みかけ、こちらも挨拶を返しながら誰だろうと少し訝しがると、ステージの司会をその方が担当して・・・、おお、あそこで俺が挨拶を交わしたのは、エルヴィン夫人、ケイコ・ジョーンズさんだったんですか!なんてこともちょっとした思い出である。


・ブッシュはバカだとか、野菜を食えだの、ケイコさんのMCもなかなか楽しめたが、何よりも、日本のジャズの歴史が場の空気の中に漂うピットインのステージに、黒人のメンバーが並ぶというのが、なかなか濃厚でコクのある雰囲気を醸し出していた。ドラムを叩きながらニカっと笑ったエルヴィンの歯の白さが、もうだいぶ前のことのはずなのに、やたらとくっきりとした映像で、今でも心の中に残っている。


New Year Session 〜エルヴィン・ジョーンズを偲んで〜
一月二日・新宿ピットイン

MEMBERS
辛島文雄(P)高橋知己,植松孝夫(Ts)向井滋春(Tb)
椎名 豊(P)小杉 敏,桜井郁雄(B)渡辺文男,本田珠也(Ds)