最近読んだ本

 
ネルソン・ジョージ「ヒップホップ・アメリカ」(ロッキング・オン)。

なんでヒップホップのブラザーが銃殺されたりする事件って時々起きるんだろう?、という素朴な疑問でこの本は買ったのだった。


その疑問にこの本を通じて答が見い出せたか、っていうとそれはNOだった。でも、ヒップホップを語ることを通じて、ファッションからバスケットボールまでを含んだ、ここ二十年の包括的なアメリカ文化論が成立してしまうというのは、ちょっとした驚きではあった。淡々とした、客観的な論調をベースとしているこの本にはアクロバティックなロジックは全くない。にもかかわらず、ヒップホップをテーマとした音楽評論の本ががそのまま非常に優れたアメリカ現代文化論になってしまうということ。そのことがアメリカにおけるヒップホップ文化の強靭さ、マーケットのデカさをを最も端的に証明していると言えば良いのか。


面白かったのは、東側に対する敵意と憧れのアンビヴァレンツな感情が、西海岸のヒップホップの成立を支えていたって話。そういうイースト・コーストに対するアンビヴァレンスって、そういえば大学時代にS・フィッツジェラルド読んだときにも、彼の小説の登場人物から透けて見えたものだった。それはもしかしたらアメリカの一つの精神史を支える大きな主柱なのかもしれない。そういう観点から、アメリカの集合的な無意識を炙り出すような、アメリカ精神史って書けるんじゃないかな?でももう誰かそんなことやってる気がするな。巽孝之とかどうだろう?