久しぶりの読了本

京極堂の新作を読んだよ。

・ストーリーと関わる形で提示される、妖怪とか民俗学とかそっち方面の情報の細かさと膨大さで読者を圧倒する。というのがこのシリーズの肝だったと思うのだが、ここしばらくの作品ではそうした薀蓄語りが著しく減っている。これは残念極まりない。まあ、本作ではロラン・バルトのテクスト論っぽいお話やら、帝銀事件をめぐるトリヴィアが開陳されているにはいるのであるが、いや、そうじゃねえだろ。と思わずにはいられない。ま、単にこちらに民俗学的知識がないものだから、京極通じて学べていた、ってところがあるのかもしれないが。

・所謂サーガ的な展開を続けているわけだが、シリーズ全体をしっかり把握している読者層ってどれだけいるんだろうか?京極とか榎木津とかの登場人物に「萌え」る読者層というのは想定できなくはないのだが(って言うか、このシリーズのマーケットの多くをそうした層が実際占めているのであろうが)、「うおお、○○死んじゃった〜!」(ネタバレになるので伏せた)とか、「山下警部補(だっけ?)、良い奴になったなあ」とか「大場、相変わらずイカス」みたいな感じで、サブキャラにまできちんと反応をしている読者層って本当にいるのだろうか?いやさ、そういう読み方を読者に求めているような記述が結構目立つんだよね。旧作での出来事についての言及がやたらと多いし。このへんがやたらとカッタルイ。

・あと、「新本格」以降に顕著だと思えてならない、思わせぶりな一人称独白。個人的にはこいつもカッタるくて読むに堪えん。そのへんもカットの方向で、って感じでもっと短くしようや。


邪魅の雫 (講談社ノベルス)

邪魅の雫 (講談社ノベルス)