dip@渋谷クアトロ


・久しぶりのクアトロでクアトロの内部構造をすっかり忘れていたよ。あ、階段登るんだった、みたいな(笑)。


・なんか男独りの客が多い(俺もだけど)。以前だと、いかにもライブハウスが好きですっ、みたいな女の子ばかりが多くて、居心地が悪い思いを味わっていた(もちろん今回もいっぱいいたけど)。けど、最近の好調ぶりに合わせて、(良い意味での)文系ロック・ファンみたいな層も再び増えているのだろう。好ましいことであります。しかし俺を前後で挟んだ男子二人は盛り上がり過ぎ。頭振り過ぎだよ。あれだけ頭振ったら、きっと後で吐いたに違いない、と思う(笑)。


・ともあれ開演時にはほぼ満員状態だった。前回のクアトロワンマンは五年前(!)だったと思うけど、こんなお客は詰め掛けていなかったし、ライブも結構寒いものだった覚えがある。その時を思うと、今日の観客の熱気もバンドの調子も、天と地の差だ。感無量だ。他に適切な言葉が思い浮かばない。


・二時間半、まるごとの熱演だった。かつてのライブだったら休憩が挟まっていた長さだが、今回はブレイクなしの直球勝負。気のせいかもしれないけど、久しぶりにナマで観たヤマジは、昔より若返った気がする。痩せただけ、かもしれないけど。


・細かいレヴューはできない。何の曲をいつ演奏したのか、はっきりと覚えていないんだよね。充実し過ぎていて、記憶にないのだ。しかも、そろそろ終盤で一気に盛り上がるかぁ!という時に「SERIAL」とか「LUNG」のようなちょっと地味めな曲が挟まったり(失礼!・いや、確か「LUNG」演奏したよな!?)、といった感じで、そのくらい長いライブだった、ということもあるんだけど。


・バンドとしても、とにかくたくさんの曲を演奏しよう、というのが狙いとしてあったのかもしれない。「underwater」(「Uボートのテーマ曲」?!)なんかでもインタープレイも思いのほかあっさりとしていたからだ。でも、そのおかげで、こんなにお腹いっぱいな気分を味わえたdipのライブをはじめて体験できた。


・特に印象に残っているのを挙げれば、「クロウル」→「稀有」の流れ。大阪のライブでも演奏したらしいんだけど*1、いやあ、コレが来るかねえ、って思いはやっぱり強かった。よっしゃ、「tomorrow never knows」とかも演奏しちゃえば良いのに。あと「WAITING FOR LIGHT」とか「lilac accordion」とか「太陽の中の恋人たち」とか・・・。まあさすがに、そこまではなかったけど、「クロウル」と「稀有」だけで、もうホントに満足だ。


・あと「BOXER」のノイジーなギター。ハウリングさせるのでも、ただハウリングさせるのではなく、音符の長さ、間合いに細かく気を配っているヤマジの繊細さが窺えた。繊細な暴力。本来なら結びつくことのないその二つが、対立することなく自然に同居しているところにヤマジのギターの魅力があると思うけど、それが一番良い形で表れていた、と思う。


・サブでギター弾いていた人(誰?)が参加したことで、音に厚みがあったのは影響しているとは思うのだけれど、「BEND YOUR HEAD」から「she cracked」の流れはライブ盤より間違いなく良かった。しかし、それにしても「BEND YOUR HEAD」は本当にキャッチーで良い曲だ。他の何曲かでもそうだったけど、五人がステージに立つDipというのも、実に新鮮だったなあ(笑)。


・不覚にも涙を落としそうになったのは、「to here never come」の冒頭。ヤマジが弾き語りで歌ったところ。「to here never come」も、やはり良い曲だと思う。このへんのキャッチーなナンバーは、ヒットチャートで上位にランクしても、ちっともおかしくないと思う。


・あと思いがけないアンコールの三曲目も泣きそうになった。ドラムがヤマジでギターがヨシノトランスで、ナカニシのボーカル「COME OUT」ときた!こういう風にメンバー全員がライブそのものを楽しめているのが、現在のバンドの状態の良好さを表しているとも言えるだろう。


・とは言え今日でしばらく活動休止。でも、今日ほどのライブを見せてくれれば、それはそれでよいかな、と思えてしまった。しばらくの休止を意識しての溢れんばかりの意気込みが、しっかりと音の一つ一つに満ちていたからね。